利上げで中小企業が見るべきものは、融資金利だけではないです。まず当座預金・手形決済・銀行取引です。
なぜか。利上げで怖いのは金利だけではありません。

金融機関から見た取引姿勢と、資金繰りの見られ方が変わることです。

26年6月16日に日銀の利上げ発表

利上げでの世間の話題と経営者の目線は異なるべき

26年6月16日に日銀が0.75%から1.0%へ、0.25%ポイント引き上げた利上げを発表しました。
これにより、政策金利は31年ぶりに1%台の水準となります。

世の中の実感というと、
「利上げで中小企業の負担増」
「住宅ローンに影響」
「倒産リスク」
「金融政策の転換点」
などが、速報として挙げられています。

しかし、まず経営者としては、融資金利に目が行くと思います。
しかも、意外となぜ自分の会社の融資金利がその%なのか、どうやって決まっているのかを理解している方は少ないのではないでしょうか。

今回はそのあたりを解説したいと思います。

まず、私がこのことを解説できるわけ

過去の経歴から

私は銀行の融資担当者だったわけではありません。
(以下、金融機関は「銀行」で統一します)

しかし、過去の私の経歴は一部記事にしています。

つまり、私のコンサルの1つの領域「金融事業」は、この頃から親会社の銀行システム・そして外部向けの新金融管理会計システムの頃に培われたものなのです。

よって、銀行の管理会計(金融機関の収益とコストの構造)を見る側にいました。

だからこそ、融資が銀行にとって収益であり、同時に貸倒リスクというコストでもあることを理解しています。

なので、今回の利上げのインパクトにより、銀行(特に地方銀行)が取り得る対応を挙げたいと思います。

【第1章】 製造業などの手形取引がある場合

金利よりも当座預金は後回しになりやすい

この章で言いたいこと】
手形取引は当座預金から引き落とされます。
しかし、その当座預金まで目が行き届かなくなってしまうのが危険なのです

  1. 日銀の利上げで「融資が厳しくなる」と言われている
    利上げ局面で本当に怖いのは、融資金利だけではありません。
  2. 小規模・零細企業では、「当座預金」と「手形決済の管理」が先に崩れることがあります。
    そうなると、まず慌ててしまい、おろそかになりやすいのは実は融資ではなく、当座預金です。
    ここに一定額の預金がないといけません。
  3. ただ、手形の期日までに当座に入っていればいいという小規模・零細企業が多いのが実情です
    入金予定のあった取引先で、不渡りや入金遅れが発生した途端、自分の会社にも被害が出て、当座預金へ入金ができなくなります。
  4. つまり、中小企業の資金繰りで怖いのは、赤字そのものよりも、決済日にお金がないことです。
  5. 融資返済のように「少し待ってください」と相談する世界ではなく、決済のルールで処理される世界です。
    しかも、融資返済と手形決済は、銀行との交渉余地が違います。
    手形取引の場合は、待ってくれとはいかないのが現実です。

このような局面ですから、利上げ局面で銀行が見ているのは、借入残高だけでなく資金繰り管理能力です。

よって、社長や財務担当者が今すぐ見るべきものは、借入一覧より先に
「支払予定表・入金予定表・当座残高」になります

【第2章】 銀行融資はドライに動いています

銀行は融資に関してはかなり厳格に管理しています

この章で言いたいこと】
銀行も企業ですから、義理人情で融資を行っているわけではありません。
きちんと返済能力があるかを見ています。

銀行融資は、社長が思っているほど“人情”だけで動いていません。
融資先は、銀行内で厳密にランク管理されています。

多くの中小企業経営者は、

「昔から付き合いがある」
「担当者がよく来てくれる」
「支店長とも面識がある」
「今まで返済遅れはない」

くらいで安心しがちです。

しかし、内部事情はかなり違います。
実際には銀行側では、融資先ごとに内部管理があります。

  • 企業規模
  • 資本金
  • 業績
  • 財務内容
  • 担保
  • 保証
  • 返済状況
  • 取引履歴

など、さまざまな要素を審査して融資を行っています。
それなりに大きな銀行だと、融資部(一般企業でいう営業)と審査部(一般企業でいうリスク管理部)が分かれていたりすることもあります。
要は、企業から融資をお願いされ、融資部が一次判断をしてOKとしても、さらに審査部がもっと深い調査(担保が融資に見合う担保価値があるのか、他からも融資を受けていないかなど)でNGもしくは減額融資になることも、普通にあります。

つまり、銀行は、融資先を“感覚”で見ているわけではありません。
内部では、財務内容や担保、資本金、事業規模、返済状況などをもとにランク付けしています。
そのランクによって、金利や融資条件、担当者の見方も変わります。

【第3章】 「担当者がよく来る」の意味

銀行の担当者がよく来る意味を考えましょう

この章で言いたいこと】
よく担当者が様子伺いに来る。

これは本当に様子伺いの時もありますが、決算書の状態を目で確認しに来るケースもあるのです

普通の経営者は、
銀行の担当者がよく来る=大事にされている
と思いがちです。

銀行の担当者が頻繁に来ること自体は、必ずしも悪いことではありません。

でも、頭のどこかに入れておいてほしいのは、
決算後や業績悪化後、急に訪問頻度が増えた場合は、“関係強化”ではなく“確認”の意味合いが強くなっている可能性があります。

雑談のようで、
「最近の売上はどうですか」
「仕入れが増えていますね」
「人件費が増えていますね」
「売掛金の回収は遅れていませんか」
などで、状況確認を行っています。

もちろん、不必要に警戒するべきではありません。
すべてがそうではありませんので。

【第4章】 貸借対照表と損益計算書

貸借対照表と損益計算書の意味を経営者ならば理解しておきましょう

この章で言いたいこと】
貸借対照表と損益計算書は作成していると思いますが、その意味を理解して、銀行から説明を求められたときの準備が大事です。

この財務諸表は税法・会社法などの絡みもあるので、作成していると思います。

貸借対照表(B/S)は「会社の体力」
損益計算書(P/L)は「会社の稼ぐ力」

と思ってください。

そうなると、銀行が見るポイントがわかると思います。

  • 貸借対照表(B/S)
    現預金が薄くなっていないか
    売掛金が膨らんでいないか
    借入金が増えすぎていないか
    役員貸付金や不明瞭な出金がないか
    など。
  • 損益計算書(P/L)
    売上が落ちていないか
    粗利率が悪化していないか
    人件費が増えすぎていないか
    営業利益が出ているか
    経常利益で利息を払えるか
    など。

特に、費用(コスト)が説明できないのは、かなりまずいです。
固定費がなぜ増えたのか。変動費がなぜ増えたのか。
それは外部要因なのか、内部要因なのか。

普通の家庭でも家庭の支出を見直すときに着手するのは、費用ですよね。
固定費である電気代・ガス代などの光熱費をいくら払っているのか、変動費である食費はいくらなのか。
それと同じです。

よって、こう言えます。
銀行から見て、“この会社は資金繰りと経営実態を説明できる会社か”を問われる局面になることです。

さらに補足すると、税理士、または会計士などの専門家の目が入っていると銀行からは安心材料になります。「士業」の方々なので。

よって、同じ決算書でも、税理士や会計士が関与しているかどうかで、銀行側の受け止め方は変わります。

専門家が数字をチェックしている会社であれば、銀行は数字の作り方そのものよりも、その数字が示している経営実態を確認しに来ます。


※キャッシュフロー計算書の取り扱い
大企業であればキャッシュフロー計算書も重要です。
ただ、小規模・零細企業ではそもそも作成していないことも多いです。
その場合、銀行はB/S、P/L、預金口座の動き、売掛金・買掛金、借入返済予定などから、実質的な資金繰りを見ます。

【第5章】 銀行が「見守る側」から「回収する側」に変わる瞬間

銀行も慈善事業で融資なりをしているわけではありません

この章で言いたいこと】
銀行も企業ですので、貸した資金が焦げ付くのは避けたいのです。

すぐに資金引き上げとはなりませんが、条件がそろうと回収に向かいます。

銀行は、少し業績が悪いだけで、すぐに資金を引き上げるわけではありません。
説明ができる会社、改善の道筋がある会社、税理士などが関与して数字の整理ができている会社であれば、銀行も様子を見ます。

しかし、

  • 決算書の内容を説明できない
  • 不明瞭な出金がある
  • 資金使途が違う
  • 粉飾に近い処理がある
  • 税金・社会保険・法令違反関連の問題が見える
  • 経営者の説明が曖昧
  • 他行や取引先にも影響が出そう

こうなると、銀行の見方が変わります。

ここで銀行は、
「支援する相手」ではなく、「回収リスクのある相手」として見る
ようになります。

この切り替わりが、外から見るより速いのです。

銀行は、危ないと判断した瞬間に、会社を助ける金融機関ではなく、自分たちの融資資金を守る金融機関になります。

【第6章】 地方企業の怖さ

地方企業だと、資金の当てが少ないのが実情です

この章で言いたいこと】
地方企業であれば、どうしても借入先が少なくなります。

その際に銀行の融資が止まると、どうしても出口が見つからなくなってしまいます。

地方や小規模企業の場合、メインバンクが地銀1行。
または、地銀と信金の2行くらい。
つまり、取引金融機関が少ない。

この状態で、どこか1行が「危ない」と見たら、会社側の逃げ道が少ない。

実質的には、
銀行取引が止まる=現金の入口が狭まる
ということになります。

これは地方企業に限りませんが、特に多いケースなので、ここで触れます。

自分の会社の経営は健全でも、取引先の入金遅れや不渡りで、自社の決済に穴が空く。

  • 当座に入金できない
  • 手形決済ができない
  • 取引信用が落ちる
  • 銀行が警戒する
  • 追加融資が難しくなる
  • 資金繰りが急速に悪化する

という連鎖になる。
これは「売上が落ちたから倒産」ではなく、

入金タイミングが崩れたことで倒れる

という話です。

ここが中小企業の資金繰りの怖さです。

【第7章】 サービス業では平気なのか

サービス業でも、それなりの規模になると銀行融資を受けているケースが多いです

この章で言いたいこと】
では、手形を使っていないサービス業などは大丈夫なのか。いや、そんなことはありません。

融資を受けていれば同じような事態になりかねません。

手形を使っていないサービス業でも、安心ではありません。

融資された資金がそのまま普通預金に入り、そこから人件費・家賃・外注費・広告費などが毎月出ていくのです。

つまり、決済事故のように一発で表面化しない代わりに、
普通預金が毎月じわじわ減っていきます。
この「じわじわ」が怖いのです。

手形取引の会社は決済日に一気に危機が表面化する。
サービス業は普通預金の残高がじわじわ減り、気づいたときには融資なしでは回らない状態になります。

【第8章】 利上げに伴う小規模・零細企業への影響

政策金利が上がることに寄る直接的な影響とは

この章で言いたいこと】
今回の利上げの影響がすぐに出るとは限りません。

しかし、今後の借入、変動金利で借り入れている場合は、影響が出る可能性もあります。

問題は、固定金利で借り入れているか、変動金利で借り入れているかによります。

固定金利ならば、今のままの金利になります。
問題は変動金利で借入を行っている場合です。

変動金利は市場金利の動向に合わせて定期的に適用利率が見直される金利タイプです。
基準金利が引き上げられた場合は支払利息が増加するリスクがあります。
つまり、今後は銀行によって、この変動金利が変わり、利率が高くなるということになります。
そうなると、返済は「元本+利息」になるので、この利息部分の負担が大きくなります。

細かい部分は三井住友カードのホームページが詳しいので、リンクを貼っておきます。

https://www.smbc-card.com/hojin/magazine/tips/interest-rate.jsp

まとめ

まず冷静に、自分の会社の財務状況を把握しておくことが先決です

以上、長くなりましたが、意外とこのあたりの融資の内部事情は、銀行内でも融資畑以外の方には見えにくい部分も多いのが実情です。そして、借入側も詳細は理解せずに借入している経営者の会社も多いので、ぜひ知っておいてもらいたいと思い、急いで記事にしました。(6月16日)

ただ、今後はそれぞれの銀行の対応などにより、一概には言い切れません。

ただ、これだけは覚えておいてください。
基本的には金融機関は味方です。

日銀の政策金利が上がったからといって、いきなり軒並みに利率を上げるということは少ないと思います。
そのために、個々の融資担当者がいるのですから。

心配なことは、その自社担当の融資担当者に相談するのが一番です。


以上、今回の記事でした。
また別の記事でお目にかかりましょう。