前回は「トップダウン」でした。前回記事では部門間で共通認識ができたら、
「トップダウンに持ち込みましょう」でした。
昔ながらの老舗企業の業務改善はできるのか
トップの判断が極めて保守的なケース
前回の最後にもお話ししましたが、根底はこれです。
「今までのやり方こそが正義」という文化が根強い組織
そして、なぜこうなるのかというのは、実はこれです。
突き詰めると「変われない」のではなく、変わらない方が社内的には合理的に見えてしまう構造があるからです。
では、なぜこうなってしまうのかを順番に追ってみましょう。
1.「問題が起きていない」の定義が、異常に甘い
経営層は現場を見ているのか
じつは、現場ではこういう事態に陥っていたりします。
「非効率」・「属人化」・「二重入力」・「確認待ち」・「紙」・「Excel地獄」
でも、会社のトップ層(役員会議とか)ではこう見えています。
「売上は立っている」
「顧客から大クレームは来ていない」
「とりあえず回っている」
つまり、老舗企業における「問題なし」とは、
誰かが毎日かなり無理をして、表面上だけ破綻していない状態を指すことが多いのです。
しかも、下手をすると、破綻しかけないような細工をしようとしてしまうケースもあります。
財務的な問題でよくあるこのケースは
「粉飾決算」です。
でも、情報は毎日メディアなどで入ってくるので、改革の必要性はなんとなく認識はしています。
ただし、経営上の数字に火がつくまで、もしくは「まだ大丈夫」という思いになりたいのです。
2.改革すると、過去の意思決定が間違っていたことになる
「改革」の時間の方向性とは
これは、特に創業者の方が会長とか社長で経営陣に残っている場合です。
その方が、先進的なことを取り入れるという視点を持っていれば、良いのですが、基本的には人間の性質上、「成功体験」は強いのが事実。
基本的に「業務改革」とは未来をどうするという話です。
しかし老舗企業では、実態としてはこう受け取られることが多いです。
「今までのやり方は非効率でした」
「この承認フローは無駄でした」
「この帳票は意味がありませんでした」
「この部門配置はおかしいです」
つまり改革提案は、過去の管理職・役員・古参社員の仕事を静かに否定する行為になる。
だから内容の正しさ以前に、
誰の顔(メンツ)を潰してしまうかの社内力学にすり替えられる。
よって、業務改革ではなく、「社内歴史認識問題」になってしまうのです。
3.属人化している人ほど、改革されると困る
一般社員でも権力を握るとき
老舗企業では、業務が人に張り付いている。
「あの人に聞かないと分からない」
「あの人しか処理できない」
「あの人がいないと月次が締まらない」
本来これはリスクです。
でも社内政治上は、その人の存在価値になります。
だから業務を標準化し、見える化し、誰でもできるようにすると、困る人が出る。
なぜなら、
ブラックボックスであること自体が、その人の権力だからです。
改革とは、その人の仕事を奪うのではなく、その人の“神秘性”を奪う。
ここが一番嫌がられます。
4.部門最適が強すぎて、全体最適が誰の仕事でもない
誰が、会社を俯瞰して動き、指示を出しているのか
営業は営業の都合で動く。
製造は製造の都合で動く。
品質は品質の都合で動く。
経理は経理の都合で動く。
全員、自分の部門内では正しいことを言っています。
ただし、会社全体で見るとぐちゃぐちゃ。
しかし老舗企業では、全体最適を見ようとすると、急にこうなります。
「それはどこの部門の責任ですか?」
「うちだけでは決められません」
「関係部署と調整が必要です」
「一度持ち帰ります」
そして持ち帰ったまま、季節が変わって気がついたらなかったことに。
要するに、全体最適は大事だが、全体最適の責任者はいない。
これでは、「業務改革」ができることは難しいです。
5.結局、改革より“波風を立てない能力”が評価される
横の顔を伺いつつ仕事をしている
老舗企業で最も評価されやすいのは、成果を出す人ではなく、揉め事を起こさない人です。
改革を進める人は、必ずどこかで摩擦を起こす。
無駄な業務を消す。
不要な承認を削る。
部門間の責任を明確にする。
数字で問題を見せる。
曖昧な合意を許さない。
これは会社にとって必要でも、社内では非常に嫌われやすい。
なぜなら改革者は、平和な職場に見えていた場所へ、
「実はここ、腐ってますよね」
と空気を読まずに言ってしまう存在だからです。
結果、改革しない人が「安定感のある人」になり、
改革しようとする人が「ちょっと面倒な人」になる。
老舗企業の「業務改革」が進まない理由は、ここに詰まっているといっても良いでしょう。
じゃあ、老舗企業ではどうすればいいのか
老舗企業での改善の道は
期待させても意味がないので、はっきり言います。
「経営層の意識が変わらないと無理です」
まとめると、老舗企業が業務改革を受け入れないのは、単に保守的だからではありません。
今の非効率で得をしている人がいて、
今の曖昧さで守られている人がいて、
今の属人化で価値を保っている人がいて、
今の部門最適で責任を逃がせている人がいる。
だから改革は、正論としては歓迎されます。
(やってる感が出るから)
よって、外部の力(コンサル)などに依頼。
ここが分水嶺。
その外部の意見に耳を傾け、現場の疲弊などを経営層が理解し、「スクラップ・アンド・ビルド」で、時代に遅れまいとする覚悟を持たなければいけないのです。 だから、第2弾でお話しした「ミドル層を巻き込む」というのは、かなり重要な転換期になるのです。経営層も見て見ぬ振りはできないから。
でも、正直言って、正面から業務改革を掲げた瞬間に、社内では改革プロジェクトではなく、各部門なりの防衛戦になります。
老舗だから、安定して入社し、そこそこ業績も上げ、定年まで勤めたいという人が多いから。
そうすると、老舗企業における業務改革とは、会社を良くする活動ではなく、会社が長年かけて作り上げた“変わらないための完成度の高い仕組み”に穴を開ける行為と見なされてしまいます。
じゃあ、仕方ないとなりますが、私の実際手がけた案件を例にして、
こういう老舗企業がどうなるのかをご紹介して終わりにします。
【ある大手家電メーカーの一部門の工場改革とある大手建築部材メーカーの営業改革のお話】
簡単に言うと両社とも工場・営業が上手くいっていない状態でした。
よって、上層部から改革依頼が来ました。
しかし、こういう状態に陥りました。
ヒアリングとか会議日程を組むと、こちらの状況も考えてくません。
「忙しいから○○日に日程を変えてくれ」・「今忙しいので、また連絡する」の連発。
こちらとしては、その「忙しい」=「非効率」をなんとかするために依頼を受けているのです。
結果:
家電メーカーの工場は閉鎖。建築部材の新営業施策は大幅縮小。
そして、その経営層の理由。
「現場の非協力により、投資効果が見込めないから」
今現在の状況
家電メーカーは、その事業自体を売却。
建築部材メーカーの営業政策は看板のみで未稼働。
つまり先送りにしたがゆえに、意味のない施策になってしまい、一番良くない結果になりました。
これは、致し方ない部分かなと思っていました。当時から。
残念ですけど、それだけ企業文化が強く、断片化されている組織では。
まとめ
業務改革とは
ここまで第3回に分けて、業務改革についてお話ししてきました。
正直言って、それなりの規模の会社では難しいのも事実です。
よって、外圧を利用するのが良いのです。
じゃあ、どう選べば良いのか。
これは、私の今後の記事にもしたいと考えています。
以上、「業務改革」の具体的進め方の具体的方法論3部作でした。
何かヒントにしていただけると幸いです。
また、別の記事でお目にかかりましょう。
